
ストレスという言葉はごく一般的になりましたが、もともとは物理学用語で、「物体の歪み」を意味します。ゴムボールを指で押すと歪みます。この歪んだ状態をストレスといいます。
この概念を医学の分野に取り入れたのがハンス・セリエです。セリエは、動物にさまざまな刺激を与えると、生体に変化が現れることを観察し、この刺激をストレッサー、これによって引き起こされる生物学的反応をストレスと定義しました。
ストレッサーには物理的、化学的、心理社会的ストレッサーがあります。物理的ストレッサーには、厳しい高温や低音、激しい騒音や振動があります。化学的ストレッサーには、薬物、空気中の有害物質などがあります。心理社会的ストレッサーには、対人関係、仕事上の問題などさまざまなストレッサーがあります。
なかでもストレスを考えるうえで重要であり複雑であるのは、心理社会的ストレッサーであると考えられています。
人間は、自分を守るために生体防御機構が働き、健康を維持しようとしています。しかし、こころやからだに適応できる限度以上のストレッサーがかかると、こころやからだに様々な変化を生じ、病気に至ります。
人間のこころとからだは密接に関連しているため、心理社会的ストレッサーは身体疾患の発症と関連を持つと考えられています。このような疾患には、次のようなものがあります。
・ 循環器系の病気(高血圧・動脈硬化・狭心症・心筋梗塞など)
・ 消化器系の病気(胃炎・胃潰瘍・下痢・便秘・慢性膵炎など)
・ 呼吸器系の病気(過換気症候群・喘息など)
・ 内分泌・代謝系の病気(糖尿病・バセドウ病・摂食障害など)
・ 神経・筋肉系の病気(偏頭痛・書痙・自律神経失調症)
・ 皮膚科系の病気(慢性じんましん・アトピー性皮膚炎・円形脱毛症など)
・ 婦人科系の病気(月経前症候群・更年期障害など)
私たちは、日常生活の中でストレスから逃れることはできません。ストレスとうまく付き合い、こころやからだの病気にならないためには、自分の「ストレスサイン」に早く気づくことが大切です。
こころのサインは、態度や行動などに見られる客観的サインと自覚的なサインがあります。落ち着かない、なにもしない、仕事の能率があがらない、服装が乱れる、奇妙な言葉などは客観的にみられるサインです。不安、ゆううつ、怖い、気が重い、いらいら、悲観などは自覚的なサインです。
からだのサインも客観的なサインと自覚的なサインがあります。発汗が異常に多い、脈拍が多くなる、血圧が上がる、便秘や下痢、涙を流すなどは客観的サインです。また、胃潰瘍やじん麻疹などの病変が現れることもあります。めまい、頭痛、息切れ、動悸、腹痛、しびれなどは自覚的なサインです。