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研究代表者挨拶

 近年の食生活の欧米化により、心臓を養う冠動脈の動脈硬化による心臓病、すなわち冠動脈疾患の患者数が増加しております。このため、脳血管障害と合わせた「動脈硬化性疾患」は、ガンに続いて日本人の死因として第2位となっております。

 冠動脈疾患を引き起こす原因の1つとして、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が知られています。 LDLコレステロールは心臓を栄養する血管(冠動脈)の壁に入り込んで動脈硬化性の変化をきたします。これによって血管が細くなると、冠動脈を流れる血流が減少し、息苦しさや胸の痛みを引き起こすことがあります(狭心症)。
 さらに、プラークが破れてできた血栓が血液の流れを止めることで心筋梗塞を引き起こすこともあります。

 血液中のLDLコレステロールを減らす薬剤として高脂血症治療薬である「スタチン」の有用性が知られています。スタチンを用いてLDLコレステロールを低下させると、心筋梗塞や脳梗塞などの発症をより予防できることが海外の研究で明らかになりました。また、同じ種類のスタチンでも、通常用量よりも多い量を用いてより低くLDLコレステロール値をコントロールした方が、心筋梗塞や脳卒中の発症防止に有効であることも明らかとされました。
 これらの結果、海外においては日本の基準よりもより低くLDLコレステロールをコントロールすることが推奨されています。

 しかしながら、海外のデータは日本でも診療の参考にはなるものの、体格や生活習慣が異なる日本人にそのまま当てはめることには、慎重にならざるをえません。日本では日本人を対象とした臨床試験から得られた情報を基に診療する必要があると、私どもは考えております。
 このような状況の中で、この度

冠動脈疾患患者に対するピタバスタチンによる積極的脂質低下療法
または通常脂質低下療法のランダム化比較試験(REAL-CAD)

を実施させていただくことになりました。

 この臨床試験は冠動脈疾患をおもちの患者様を対象として、ピタバスタチンの通常用量を用いたLDLコレステロール低下療法と、高用量を用いた強力なLDLコレステロール低下療法の、どちらが心筋梗塞や脳梗塞などを予防する力が強いかを比較するものです。

 本試験の実施により、日本人の冠動脈疾患の患者さんにおけるLDLコレステロールの治療目標値が明らかになり、今後、皆様の診療方針の決めるうえで、重要な情報が得られると期待されます。
 本試験に参加頂く患者の皆様、共同研究者の皆様にこの場をかりて心よりの感謝を申し上げますとともに、今後とも本試験へのご協力を宜しくお願い申し上げます。

 なお本試験の実施におきましては、公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターより援助を頂いております。

REAL-CAD研究代表者

自治医科大学 永井 良三

山口大学 松﨑 益德

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